カフェフードバーわいわい
ほやの天ぷら:500円(3コ)
@等々力陸上競技場
『ホヤ』って凄いよねぇ…。
見た目は超グロテスク。オレンジ色の不気味な軟体は気味の悪い物体で、どう見ても美味そうには見えない。人類で最初にこれを食べた人はよほど食うものが無く腹を空かせていたのだろう。じゃなきゃー、普通食べてみようとは思わないはずだ。見た目の形状から”海のパイナップル”なんて呼ばれているがこんなのほぼこじつけ。『海の十二指腸』と呼ばれたほうが、正直スッキリする。
ただ、そんな『ホヤ』だが味は別格。世界三大珍味と呼ばれるキャビア、トリュフ、フォアグラよりも複雑な味わいで、プルプルとした食感から津波のように押し寄せる怒涛の海のエキス。ほんのり感じる苦味がアクセントとなって全体をまとめ上げている。なんと不思議な食材だろうか。そもそも『ホヤ』は、味覚の基本要素(甘味・塩味・酸味・苦味・旨味)を一度に感じることができる珍しい食材と言われている。また、海水の影響を受けやすい生物と言われていて、獲れる浜辺の塩分濃度の濃さやで味も大きく変わるらしい。なので、『ホヤ』を味わうという事はその海をダイレクトに味わう事だ、と断言してもいい。
そういう意味では、去年の【陸前高田ランド】で食べた「たかたのゆめ」ブランド研究所の"ホヤキムチごはん"は少しだけ不満が残った。キムチの強烈な味わいが『ホヤ』の繊細で儚い味わいを押しつぶしていた。ご飯のお供としては最高に美味いが、『ホヤ』本来の味を楽しむという点に於いては少し残念だったんだ。だからこそ、贅沢かもしれないが、個人的にはもっと『ホヤ』そのものを楽しめる料理が食べたかった。
そんな中、登場したのがこの"ホヤの天ぷら"。
天ぷらぁぁぁあー!!????
もう、最高やん!!
素材の良さを最大限に引き出す調理法として、天ぷらに勝るものはない。
世間一般的には天ぷらは【揚げ物】としての認識されている。
ただ、一流の天ぷら職人はいう。
『天ぷらの本質は【蒸し料理】なんです。天ぷらとは熱と素材そのものがもつ水分で食材の旨味をうまく引き出す蒸し物。衣の中にその旨味を封じ込め、素材のポテンシャルを極限まで引き出し丸ごと味わう贅沢過ぎる料理なんです。』と。
だから、”三陸のホヤ”をダイレクトに楽しむなら天ぷらこそがベストだ。海水の影響を受けやすい『ホヤ』を、『ホヤ』そのものが持つ水分で蒸し、『ホヤ』が持つ味覚の基本要素を全て引き出す。あぁ、もう考えただけでヨダレしか出てこない…。
と、いうわけでこの天ぷら。
人気商品で調理が追いつかないのか揚げたてをGET。
これを問答無用で口の中に放り込む。
おおおおおぉぉぉぉぉぉ…
なんだこりゃぁぁぁ…
サクサクの衣の中から現れるプリプリのホヤ。甘味・塩味・酸味・旨味が口の中で踊り狂い、ほんのりとした苦味がそれをまとめていく。特にその驚く程醸し出されるホヤ特有の甘みは突出。独特のクセ、刺激的な舌触りも和らぐ。そして、眼前に広がる三陸の海。太平洋の荒波が奇岩の断崖に砕け、白い泡となって引いていく光景が何度も繰り返される。
あぁ、絶景かな、絶景かな…。
いやー凄い。
とにかく凄い。
とんでもなく凄い。
この”ホヤの天ぷら”は間違いなく至高の逸品だ。
『ホヤ』って凄いよね…。