カップヌードル(ホットヌードル):350円
@国立競技場
旧国立時代、最大の名物にして最高の嗜好品といわれたのがこのホットヌードル。場所柄、春先や秋冬での開催が多く品揃えも貧弱ぅー!な同スタジアムで、長年幾多の観客の胃袋を支えると共に、凍えるような寒さの中で体を暖め、命を守ってくれていたのがコイツだった。時に風に晒され、雨に打たれた俺たちを優しく包み込んでくれるあたたかさ。両手を包み込むぬくもりと湯気に頬を赤らめ、口の中から食道を経て胃から熱が篭っていく体験に、自然と涙がこぼれ堕ちる。なのに、絶対に心には火を通さないニヒルなアンニョイ。その立ち振る舞いから一部では暖房と称され、安定感のあるパフォーマンスは常に貴重な存在だった。私も1度真冬のナイトゲームであまりの寒さにホント死ぬんじゃないか!?と思う時があったが、その時命を繋いでくれたのもコイツだった。砂漠を漂浪し続け諦念が芽生え始めた時に出会ったオアシス。ホットヌードルは蜃気楼じゃない。いつだってリアルで、感情を揺さぶることなくただ質朴に俺たちを温めくれた。その思い出は永遠だ。
そして、時代は流れ、国立は生まれ変わった。
でも、コイツはそこにいた。
今もリアルだった。
ほとんど変わらない佇まい。
横目の笑顔。
分厚い唇。
その全てがここが国立競技場である事を立証している。国立競技場を国立競技場たらしめるもの、それはホットヌードルなんだ。普段、コンビニやスーパーでほとんど見かけず、国立でしか会えないというのも大きい。出会いと別れ、繋がりを繰り返す日々、ホットヌードルとの思い出は寄り添う青春の煌めきと共に他愛のない日々を美しく彩ってくれる。そして今、繰り返す毎日の荒波に飲まれてもコイツがここにいる。この瞬間が永遠だといま命が囁く。心の国立競技場に映るのはいつもコイツだ。その真実に抱かれ、これからも温めてもらおう。これは次世代へと継承すべき伝統なんだ。
FOREVER ホットヌードル!
メニューでは"カップヌードル"となっているが、実際に提供されるのは『ホットヌードル』。そもそも、カップヌードルは日清食品ホールディングスの登録商標なので、この名前で売るならアレを出さなきゃいかん。ここら辺のいい加減さも国立らしくて泣けてくるぜ…。
ちなみに、【国立競技場の暖房】として諸説(カップヌードル説、ホットスター説等など)入り交じっているが、私の認識する限りでこの言葉が生まれた時期を基準に考察すると、【国立の暖房】はこのホットヌードルで間違いない。ホットヌードルこそが真の暖房だ。断言する。